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Factory Innovation Week 2024 第1回 製造業の人手不足対策EXPOでの 〈特別講演〉の内容をリポート!〈前編〉

2024.12.26
Factory Innovation Week 2024 第1回 製造業の人手不足対策EXPOでの 〈特別講演〉の内容をリポート!〈前編〉

—— 2024年10月23~25日、ポートメッセなごやにて「Factory Innovation Week 2024〈第1回 製造業の人手不足対策EXPO〉」が開催され、最終日である25日のカンファレンスの中で、「先進的人材戦略のケーススタディから視える生産性向上の実現」をテーマとする〈特別講演〉が実施されました。

 

 

この〈特別講演〉には、日総工産(株)の代表取締役社長執行役員:清水竜一と、資本業務提携先である(株)ツナググループ・ホールディングス代表取締役兼執行役員社長:米田光宏氏がスピーカーとして登壇。

多くの企業において人手不足、人材不足が深刻化を増し、産業界全体で人材戦略の重要性が認識されるなか、〈特別講演〉では、今後の日本においてより深刻化する労働力不足(労働需給GAP)によって生じる様々な課題について語り合われました。今回は〈前編・後編〉に分けて、闊達な意見が交わされた〈特別講演〉の模様をリポートします。

 

きたるべき、2030年の労働需要GAPに備えて

—— 少子高齢化によって、今後多くの企業が直面すると考えられている課題にはどのようなものがあるのでしょうか。そして、それらの課題に対して、どのような“打ち手”を講じていくことが有効なのでしょうか。まずは、眼の前でいま顕在化している“人”にまつわる課題をピックアップしていきましょう。

●日本は今後、少子高齢化によって労働需要GAP※が深刻化する
●組織へのテクノロジーの浸透に伴い、専門性を有した人材の確保が必要になる
●企業が自前で教育・研修を行うことが今後非常に難しくなる
●企業が自社の社員を再教育やキャリアチェンジの機会を創出する“リスキリング”が重要になる
●外国人労働者を雇用する際には、様々な課題を踏まえ、働きやすい環境を整える必要がある

これらの課題が山積する日本の労働市場では、今後企業がどのような有効な“打ち手”を講じるかが、企業にとっての試金石になるといえますが、その“打ち手”のひとつとして、人材採用・教育を得意とする日総グループと採用コンサルティングを得意とするツナググループ・ホールディングスが手を組み、新しいサービスを提供しようとしているのです。

両者の共創によって生み出される〈時代の潮流や変化に合わせた新たな人材ソリューション〉とは、具体的にどのようなものなのか……、両者の社長の言葉をたどることで、その姿が鮮明になるはずです。

 

マクロ的な構造課題として顕在化する“労働力不足”

——〈特別講演〉では初めに、日総グループと、(株)ツナググループ・ホールディングス(以下ツナググループ)の紹介がなされました。

ここであらためてご紹介すると、日総グループの中核をなす日総工産(株)は、50年以上の歴史をもつトータル人材サービス企業であり、全国に網羅した拠点や独自の教育施設で営業・採用・教育を展開し、ものづくり人材サービス業界の健全な発展に寄与してきました。

一方で「2030年の労働需要GAP※」の解消をめざす人材ソリューションカンパニーのツナググループは、従業員1万人以上の企業5社の内1社の割合で支援する実績をもっています

日本では、少子高齢化、子どもの貧困、災害の激甚化、環境問題、都市への一極集中、ジェンダー平等、年金・税制のあり方……などの社会課題が山積していますが、なかでもマクロ的な構造課題として顕在化しているのが人口減少に伴う人手不足です。

 

  
2030年の労働需要GAP とは?

GAP = 総需要と供給力の差のこと。
人口減少ペースが加速する日本では、
女性、高齢者、外国人労働者を活用しても、今後も人手不足は解消されず、
2030年に人手不足の規模が約700万人に達すると見込まれている試算値。
また、労働需要GAPによって、日本の成長率がマイナスに転落するという指摘も
  

 

カンファレンス〈特別講演〉リポート①
時代の潮流・変化に合わせた人材ソリューションの展開

—— 労働需要GAPは、地方から都市への人口流出、少子高齢化、人気業界・職種への偏りなどの複合的な要因によるものとされますが、特に近年、黒字であるにもかかわらず働き手不足によって倒産に至るケースも増えていて、「2030年の労働需要GAP」の解消が日本、そして産業界の喫緊の課題になっています。

こうした“人”に関連した課題の解消に取り組むため、主に製造業で高い実績をもつ日総工産と、サービス業に強みをもつツナググループは、互いの異なる特徴と顧客アセットによる「共創」を目的に、2024年5月に資本業務提携を締結。製造業、倉庫・物流業、サービス業など業界を横断した両者の「共創」によってもたらされる高品質かつ新たな人材サービスに大きな期待が寄せられています。



カンファレンス〈特別講演〉リポート②
NISSO✕ツナグの知見・ノウハウで、課題の解決に寄与

※ 以下、日総工産(株) 代表取締役社長執行役員:清水竜一氏(以下 清水氏)、
(株)ツナググループ・ホールディングス 代表取締役兼執行役員社長:米田光宏氏(以下 米田氏)と表記します

司会  2社の資本業務提携は互いの業務を助け合うことのみならず、 互いの顧客の課題に向き合うなかでソリューションの質と幅を広げるため、必然的に共創していく必要性が生まれた経緯がありますが、少子高齢化に伴って労働人口が減少の一途をたどる日本では、製造業をはじめとする様々な業界で、人手不足のみならず、就業希望者が減少する“働き手離れ”が深刻化しています。
清水氏 「そうですね。日総グループまたは日総工産では、エンジニア派遣、製造派遣、製造請負、人材紹介など、働き手の多様性に合わせた人材ソリューションを手がけていますが、わたくしどもは年間約3000人の人材をお客様のもとにお届けすることで、ものづくりの現場の人材課題の解消に寄与しています。あわせて昨今は人材派遣・紹介にとどまらず、総合人材サービス企業としての見地とノウハウを活かし、新入社員研修、ものづくり研修、安全衛生研修、管理職研修など様々な学びに+αを付加したNISSO HRdevelopment Service※という〈研修受託〉を開始するなど、社員の方々の早期スキルアップやリスキリング※など、枠にとらわれないサービスの提供に努めています」

 

司会  日総グループさんは、人を集める、人と企業をマッチングさせるだけでなく、人の育成にも力を入れていらっしゃるのですね。本日は日総工産の清水社長とともに登壇されているツナググループの米田光宏氏からも、ツナググループについて簡単にご紹介いただければと思います。
米田氏 「私たちツナググループは創業以来、コンサルティングとRPO(採用実務代行)を柱に、すでに支援先の企業様は3435社、支援先拠点数(チェーン店も含む)も約15万にのぼり、サービス業と流通業をメインに年間200万人くらいの求職者を企業や店舗にご紹介する人材支援を行っています。また、従業員1万人以上の企業の5社に1社はツナググループの支援先であり、様々なサービスを展開することで、採用シーンのあらゆる課題の解決に寄与してまいりました」

 

 

研修受託(NISSO HR Development Service)とは?

全国に自社教育訓練施設を有し、創業から50年以上にわたり積み重ねてきた人材育成ノウハウが、お客様のニーズを満たす研修を可能にします。 新入社員研修、ものづくり研修、安全衛生研修、管理職研修など様々な研修に対応いたします。学びに+αを、それがNISSO HR Development Serviceです。


【NISSO HR Development Serviceでできること】

全国各地の自社教育訓練施設を用いて、半導体・自動車・電池などのものづくりから、様々な業種に対応した研修が可能です。実践的な教育プログラムと独自ツールを活用した頭と体を使って学ぶ機会を創出しています。 施設近くには社員寮も準備しておりますので、距離や期間を問わず、全国のお客様のご相談にお応えすることができます。
経験豊富なコンサルタントと様々なメーカー出身の講師陣が、お客様のニーズに合わせた独自カリキュラムを作成いたします。 これまでに、メーカーのみならず地方自治体からもご依頼を頂戴しており、その対応範囲には自信があります。 また、講師をお客様に派遣し、出張研修を行うことも可能です。

 

 


リスキリング(Re-skilling)とは?

「リスキリング」は、企業が主体となって従業員に新たな技能や知識を提供する教育を指し、従業員は実務を続けながら必要なスキルを再習得することを指します。

経済産業省はリスキリングについて、「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要なスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

ちなみに、リスキリングとよく似た言葉に「リカレント教育(Recurrent=繰り返す」「循環する」)」があります。「リカレント教育」とは、従業員が現在の仕事から一時的に離れ、大学やビジネススクールなどで学び直し、スキル習得後職場に復帰する場合や、新たな職を探すことを指します。
このことから、2つの言葉には次のような違いがあります。
「リスキリング」……企業が主体となった学び
「リカレント教育」……従業員の自発的な学び

 

 

カンファレンス〈特別講演〉リポート③
テクロノジーの浸透によって生じる、新たな人材の必要性

司会  2024年5月に主に製造業を顧客アセットとする日総グループと、同じくサービス業を顧客アセットとするツナググループ・ホールディングスが資本業務提携を締結しましたが、近年は人材サービスの内容が様変わりし、テクノロジーとの関係なくして語ることができない側面も強まっています。その点について清水社長からご意見をお聞きしたいと思います。

 


清水氏 「多様な産業や働く場所でDX、IoT、AIなどのテクノロジーが広がりを見せていますが、これらの革新的テクノロジーが産業界に浸透することで、業種・領域の垣根を越えてボーダレスに人材が交流するきっかけが創出されています。ボーダレスに人材が交流すると、仕事の進め方や質もこれまでとは異なるものになるため、人手不足、人材不足を課題とするお客様は、自らが自社の人材をニーズに見合った能力に“リスキルする”という、取り組みを戦略的に加速させる必要性が高まっています」
米田氏 「私は最近、人手不足を解消するために省人化やテクロノジーの導入を進めていく必要性を感じているという声を多くのお客様からお聞きする機会が増えていますが、実は、最新テクロノジーを導入して省人化を進めたとしても、抜本的に人手不足が解消するわけではありません。ご存じのとおり、チェーン店の飲食店やレストランに行くと、これまで人が行ってきた受付・接客・配膳・調理などの業務をロボットが代替しているシーンをよく見かけるようになりました。一見すると、ロボットを導入したことで人手不足が解消されたようにも見えるのですが、実はロボットを導入することで、メンテナンスや機能アップデートを新たに人が行う必要性が生まれることになります」
清水氏 「例えばこれまで1+1=2の計算式で成り立っていたことも、テクノロジーが浸透することで、今後は計算式や方程式が変わることになりますので、私たち日総グループとツナググループさんがこれまで提供してきた人材に関連したサービスも、業務のロボット代行や組織のDXによって、より質が高く、業務に垣根がないボーダレスなサービスにカタチを変える必要があると考えています」
米田氏 「お客様のなかにはDXを推進することで人手不足を解消したいと考えていらっしゃるケースも多いのですが、実はデジタルテクノロジーが組織に浸透し、業務がボーダレス化するほど、テクノロジーの専門性を有した人材を確保するニーズが生まれ、自社の人材に新たなスキルを教育したり、異なる領域のスキルを身につけるリスキリングの必要性が高まることになります。つまりは、人材活用の場面で長らく1+1=2の計算式で行ってきたことも今後は通用しなくなるため、これまでとは違う新たな視点、あるいは複雑な計算式を用いて、いかに戦略的にリソース(人的資産)を有効活用していくか……という方策が企業に求められることになります」

 

 

カンファレンス〈特別講演〉リポート④
「超・人材不足時代」に打ち勝つための、有効な“打ち手”

司会  日本の労働市場では今後、新規卒業者をはじめとする労働人口数が減少の一途をたどり、多様な業界で人手不足がより深刻すると見込まれていますが、なかでも製造業は、2030年に38万人の労働力が不足する「労働需要GAP」が顕在化しています。
清水氏 「労働需要GAPは、業種を問わず多くの企業の共通課題ですが、私が人材に関してより大きくて根深い問題として実感しているのが企業と求職者の間で生じる“ミスマッチ”です。雇う側に多い“ミスマッチ”には〈求人を出しても採用できない〉〈タイミングよく人手を確保できない〉〈欲しい能力・スキルを有した人材を採用できない〉といったものがあり、特に技術・技能が求められるものづくりの現場や、先端テクノロジーを扱う生産現場では、〈自社内に専門スキルを有した人材がいない〉がゆえ〈生産性が改善されず利益も上がらない〉という深刻な経営課題に発展しているケースも少なくありません。一方で、異なる分野の仕事では人材の余剰が起きていて、企業と求職者の間で求める能力や労働条件などのミスマッチに起因する「構造的失業」も発生しています。この構造的失業と労働力不足のダブルパンチが人手不足を長期化する大きな要因になっていることも指摘されています」
米田氏 「生産年齢人口や新卒者数が減少するなかで労働需要GAPを解消するには、日総グループさんとツナググループが提供するサービスやソリューションの活用に加えて、お客様自身が生産性向上に向けた様々な方策やサービスの高付加価値化など、複数かつ多面的な“打ち手”を講じる必要があります。その一環として近年は、外部労働市場を通じた需給調整やリスキリングが有効な“打ち手”として注目を集めています」
清水氏 「そうですね。最近は外国人などで需給調整を行う企業が増えていますが、そうした動きに伴って、〈性別・年齢・国籍の多様化に対応しなければならない〉〈労働力を確保するうえでのビザの取得、住居等の環境整備〉〈社員と外国人労働者のコミュニケーションの推進〉などの多様な課題も、外部労働市場に働き手を求める企業で顕在化しています。さらに今後クローバル化が加速することで、これらの課題はより深刻化し、多様化するとも見込まれています」
米田氏 「外国人労働者を活用して人手不足をのりきりたいと考えているお客様には、わたしたちツナググループと、日総グループさんの知見とノウハウをお客様に提供し、三位一体になって課題解決に向けて共創していきたいと考えていますが、そうした取り組みが外部労働市場での需給調整の打ち手にもなりますし、これから訪れる〈超・人材不足時代〉をのりきる方策になるとも考えています」
清水氏 「お客様が真に必要とする人材はどのようなスキルを有した人なのかなど、お客様のニーズや課題を深堀りしながら、自社に在籍する“いまある人材”にどのような方法で新たなスキルを教育するか、あるいは、外部労働市場をどのように有効活用していくかなど、時代の潮流・変化に合わせた人材ソリューションをご提案することで、スピーディに課題を解決していきたいですね。人手不足や人材不足は企業にとって眼の前を塞ぐ強固な岩盤のようなものであり、その岩盤を打ち砕きたいと思って全力で体当たりしても岩盤はびくともしません。〈何をどうすればよいか……〉というプロのみが知る岩盤を打ち砕くための具体的な方法が、すなわち〈超・人材不足時代〉に打ち勝つ先進的な人材ソリューションになるはずです」