
大成功を収めたニッパツ横浜FCシーガルズ/横須賀シーガルズ共同開催の「GP(ゴールプレイヤー)・ストライカークリニック」。
Part1では当日の様子と参加者の小学生にインタビューを行いました!
ここからは今回の企画を立ち上げ、運営・実施までを行われた横須賀シーガルズの女子代表兼U18監督 桑原由恵さん(以下、桑原)にお話を伺いました。

◎はじめの一歩を踏み出すこと
松井)GP・ストライカークリニックの開催、お疲れ様でした。
早速ですが、今回のクリニックを開催するにあたっての経緯を教えてください。
桑原)私たち横須賀シーガルズが今回のクリニックを開催した目的は3つあります。
まず、女子選手たちのためにトレーニングが行える機会を作りたいということ。
そしてGP・ストライカーといった専門的な部分を学び、選手たちに成長してほしいということ。
最後にGP・ストライカーというポジションを楽しいと思ってプレーしてほしいという想いからクリニックを開催しました。
松井)「機会を作る」という意味では、一つの女子サッカークラブである横須賀シーガルズが、所属選手だけではなく地域の全選手を対象にしたクリニックを開いたことにも理由があるのでしょうか?
桑原)女子サッカークラブでこういったクリニックを実施しているチームはほとんどありません。
だからこそ、多くの女子選手のためにもまず始めてみたいと思いました。
これが女子サッカー界で広まり、他のクラブもやってみよう!という動きが起これば良いなと思っています。
松井)私は地方出身で、育成年代には女子選手だけのクリニックというのはまったくありませんでした。
この企画を実行できる環境があるというのはとても恵まれていることだと思います。
桑原)やはり関東や関西とそのほかの地域との格差があるのは現状です。
選手のレベルや人数、チーム数は全然違います。
だからこそ、私たち横須賀シーガルズが女子サッカー界にとってさらに進むための第一歩になるべきであり、この環境というのは私たちの持つ特徴、価値だと思います。
松井)先駆者ですね。しかし、第一人者というのは知見がなく実行するにあたり難しいことが多くあると思います。
何か大変なことはありましたか?
桑原)女子代表という立場でお話させていただいていますが、実際は横須賀シーガルズのGPコーチやその他のスタッフが尽力してくれました。
私だけでは決して行えていません。
松井)私も実際に参加させていただく中で多くのスタッフの方のサポートを感じましたし、スタッフ同士の仲の良さもとても感じました。
◎GP・ストライカーの2つのポジションが大事な理由
松井)なぜGP・ストライカーの2つのポジションを合同でクリニックにしたのですか?
桑原)ゴールを守る、奪うという2つのポジションのトレーニングを一緒にすることでトレーニングの質やお互いに目指す技術の向上が高まり、合理性があります。
また横須賀シーガルズのGPコーチや今回共同開催としてご協力していただいたニッパツ横浜FCシーガルズのGPコーチはアカデミーや育成年代との繋がりをとても大切にしてくれている方です。
そして、ストライカーコーチは横須賀シーガルズに所属する元なでしこJAPANの方です。そういった方々のプレーに対する意識や感覚も教えられるので大変良い機会になったと思います。
松井)指導レベルも大変高いものだったと思いました。
今回参加した選手の印象はどうですか?
桑原)ポジションに特化した選手が来ているということもあり、この時間で吸収しよう、成長しようという意欲が高い選手たちでした。
だからこそ、短い時間の中でも教えてもらったことに対してまたトライすることで変化や成長が見られる選手も多かったですね。
松井)1月の開催に引き続き、2回目の開催となった今回のクリニックですが、初回の開催から変化はありましたか?
桑原)1回目より断然参加人数が増えています。
FWに関してはキャンセル待ちとなってしまうほどのご応募を頂きました。
1回目から充実感のあるトレーニングができたからこそ、人が人を呼び、応募が増えていったのだと思います。
◎多くの女性の日常にサッカー、そして横須賀シーガルズが存在すること

松井)横須賀シーガルズの目指しているものを教えてください。
桑原)私自身、中・高校生のころに横須賀シーガルズに所属していて、OGでもあるのですが、その頃から「女性が一生涯サッカーできること」をクラブの理念として持っています。
それが叶う体制がある環境や場所にするために、大人のためのチームも設立され、就職・結婚・出産のようなライフイベントがあってもサッカーができるようになりました。
もっと多くの人にとって自分の生活に近い存在に横須賀シーガルズがあるようになれたら嬉しいですね。
また、競技としての強さも横須賀シーガルズの持つ魅力の1つです。
男子サッカーとは違う女性ならではの「華麗で優雅なサッカー」で試合を勝ち進み、全国大会などの結果をつかむことも目標です。
松井)私も横須賀シーガルズの大人チームは試合で見たり、SNS等で拝見したりするのですが、OGの方も多く、皆さんとても笑顔が多く楽しそうな印象です。
桑原)OGではなくても、もともとサッカーが好きで、1度引退したものの、横須賀の大学に通っていることをきっかけに入団してくれた人もいます。
サッカーがしたいと思うなら誰でも一緒にやりましょう、というオープンマインドで窓口を開いている場所にしていきたいです。
松井)地元にそんなチームがあったら、サッカーが生活に近い存在になりますね。
桑原)私が選手時代に関わってくれた代表やコーチの存在がとても大きく、その方々が作り上げてきてくれたおかげで、横須賀シーガルズという伝統のあるチームになっています。
歴史があるクラブであり、知名度もあるクラブになれているのでこのチームを守っていきたいという想いで活動しています。
松井)横須賀シーガルズはどのような形で地域貢献を行っていますか?
桑原)先ほどお話した、小さい年代からおばあちゃんになるまでサッカーに一生関われる場を作るというのも一つの地域貢献だと考えています。
また、練習場所である横須賀フットサルクラブを選手たちと清掃する機会を設けています。女子だけではなくNPO法人横須賀シーガルズ全体でも清掃活動を行っています。

◎日本女子サッカーの発展のために
松井)横須賀シーガルズのユース・ジュニアユースは2013年にニッパツ横浜FCシーガルズと業務提携をしましたが、何か変化はありましたか?
桑原)同じクラブとして登録することで、女子トップチームの試合運営に携わったり、毎年昇格選手を輩出したりと関係性を深めてきました。
横須賀シーガルズの選手にとっては分かりやすく憧れる選手や目指す場所ができたことはモチベーションに繋がっています。
松井)下部組織とはいっても、お互いが関わる場はそんなに多くないので、私たちもそんな存在になれているとは思いませんでした。
桑原)そうですね。もっとお互いが近くなれたら良いなと思います。
ですが、特に今回参加していただいた磯上GPコーチをはじめ、ニッパツ横浜FCシーガルズの皆さんも本当に私たち横須賀シーガルズの事も考えてくれるのでとてもありがたいです。
きっと知れば知るほどお互いは近くなるし、サッカーで繋がれると思います。
松井)神奈川県の女子サッカー、ひいては日本の女子サッカー界がどうなっていくべきだと考えますか?
桑原)小学生の参加選手が話していたように、女子日本代表がもう一度世界大会で優勝カップを掲げてほしいです。2011年のあの瞬間を見ていない、まだ生まれていない選手たちが出てきているということは、あの優勝が昔の話となってしまっていて遠ざかってしまっている危機感を感じています。そのために、どこでも戦える良い選手を育て、そしてクラブとしてもどんどん高みを目指していきます。
また、どのような形であれ女子サッカーに関わる人を増やすことも大切です。みんなが同じものを目指さないと実現には繋がらないと思います。
松井)地域格差を埋めるためにはどうしたら良いでしょうか?
桑原)まず女子指導者を増やすことが必要だと思います。いろいろな所でチームを作る人がいなければ、全国各地に女子サッカーは広がっていきません。
現在、日本の指導者の中で女性は全体の3%しかいないと言われています。だから、今サッカーに関わっている女性はこれからもサッカーから離れないでほしいです。
松井)桑原さんご自身はなぜ指導者になろうと思ったのですか?
桑原)私も最初は指導者になろうとは思っていませんでした。
ですが、いざ現役選手としてサッカーを引退したあと別の仕事に就いてみると、「これは自分じゃなくてもできることではないか」と思うようになりました。そんな時、横須賀シーガルズの前代表に声をかけてもらい、コーチとして入ることになりました。
ここは自分が輝ける場所であり、自分の経験を活かせる場所です。

★指導者としてさらなる進化を目指す桑原さん。ご自身が妊娠中にも日本サッカー協会が主催する指導者養成プログラムに参加されたそうです。★
桑原さんの横須賀シーガルズ、女子サッカーに対する情熱をお聞きすることができました。
素晴らしい指導者のもとで毎日トレーニングに励む横須賀シーガルズのこれからの活躍に期待したいです。
また、神奈川の女性にとってサッカーが身近な存在になる場所として、横須賀シーガルズがあり続けてほしいです。
私は今、自分が将来指導者になることは全く想像がつきませんが、横須賀シーガルズの皆さんを見ているとこの道もすごく面白そうだなと思いました。
桑原さんの「自分が輝ける場所」という言葉がすごく印象に残っています。
私はどのような形であれサッカーには一生関わり続けると思っているので、それが少しでも女子サッカーの未来のためになることであれば良いなと思います。