
2025年6月25日、日総グループの中核を担う日総工産株式会社(以下:日総工産)のトップに藤野賢治が新任いたしました。
総合人材サービス企業として50年以上の歴史をもつ日総グループは、“次の50年”という大海原を前進するため、2023年のホールディングス化を機に、経営と事業の分離を強化する戦略を打ち出しています。
しかしながら、日総グループという大型船が乗り出した大海原は、少子高齢化による労働力不足や、若者の就業観の変化、働き方の多様化、デジタル化に伴う産業構造の変化といった多種多様な要因が渦巻いており、その先を見通す力が必要とされています。
めまぐるしい社会変化のさなか、代表取締役社長執行役員に就任した藤野賢治は、日総工産の舵をどのように取り、めざす方向に開けている地表にどのような未来を思い描いているのでしょうか。気になるポイントを一問一答の形式で訊きました!
Q. 新社長の就任おめでとうございます。
いま、どのようなお気持ちですか?
藤野賢治(以下 藤野)……ありがとうございます。新社長を拝命したことは大変な重責を伴いますので、身が引き締まる思いです。しかしその一方、日総工産がどのような成長軌道を描くのだろう……、あるいは、私たちのもとで育った優秀な人材がどのような活躍を見せてくれるのだろう……といった今後に思いを馳せていくと、気持ちがわくわくするような高揚感に包まれていることも正直なところです。
Q. これからどのような事業、
サービスに注力していきたいですか?
藤野……私は日総工産という企業で育ち、様々な業務や人とのかかわりのなかで、多くの経験と学びを得てきました。そうしたことから、日総工産の風土や魅力は誰よりも理解していると自負していますし、「人を育て 人を活かす」の創業理念のもと、50年以上にわたって培われてきた歴史と文化に深い敬意を抱いています。
また、総合人材サービスと介護・福祉サービスの2つのセグメントで構成されている日総グループは、2023年にホールディングス化して以来、経営と事業の分離を進めていますが、このたびの日総工産の社長拝命を機に、私は弊社の強みである高付加価値の人材育成をさらに強化し、売上高と営業利益の達成を実現することを第一義としています。
Q. 日総工産の社長として、
大切にしていきたいことは何ですか?
藤野……あらためてご説明するまでもなく、弊社の基幹事業である総合人材サービスは、取引先企業であるお客様の人手不足を解消するための人材派遣とエンジニア派遣、人材紹介、そして業務そのもののアウトソーシングなどの各種事業・サービスに大別されます。
取引先企業は、自動車、半導体、電子部品を主とする日本の各分野のトップランナーである大手メーカーを中心とする700社以上で構成され、それら企業で今日も1万6000名以上の社員が活躍しています。
今後も引き続き、取引先企業や従業員のニーズにより高いレベルで応えていくため、採用した弊社の社員のスキルを上げて高付加価値の人材へと育てあげることが非常に重要です。そして、その成果がひいては、製造業以外の多様な産業のお客様にとっても高い満足度へとつながりますし、公正公平に評価される仕組みの下で活躍する社員のロイヤリティにもつながっていきます。
当然ながら、弊社にとっても高付加価値の人材を育成することが、ひいては高利益体質へとつながっていきますので、三者が良好な関係でつながるWinWinの好循環を醸成することが、私に課せられた使命であるとともに、私自身が大切にしたいことになります。

Q.営業利益目標達成に向けて
考えていらっしゃる施策等があれば。
藤野……日総グループとしては営業利益目標達成額として2028年3月期に75億円を掲げています。この目標達成に向けて、大きな役割を担うのが日総工産になります。そのためには、まず採用・募集コストの抑制が必要ですが、弊社が運営する採用サイトには、月に平均5000名※の応募数があり、加えて、北海道から沖縄におよぶ全国の採用拠点を設置していることから、かなりの反応を得ている現状にあります。※2024年度実績
その一方で、ミスマッチによって採用に至らないケースが一定数あるという課題も顕在化しており、これが採用率と収益性の障壁にもなっています。
この課題を解決するには、人材の属性をより精緻に分析・把握することが重要なポイントとなることから、グループインしたツナググループのノウハウと、弊社がもつビッグデータを掛け合わせ、そのデータを分析する取り組みをすでにスタートさせています。
取り組みがスタートして以来、実際にミスマッチの事例件数は減少しており、その人材に最もふさわしい職種や勤務先をミスマッチなく推奨・提案できたという成功事例や、採用から漏れていた人材の就労機会創出につながった事例が、あまた報告されています。
Q.ミスマッチのない採用成功事例のほか、
採用に対する新たな取り組みはございますか?
藤野……ミスマッチのない採用成功事例と同時に、今後は新卒や若手にとらわれず、採用対象者を再雇用者、中途、ミドル・シニア、外国人に広げ、これまで採用のハードルが高かった人材の就労機会についても積極的に創出していきたいですね。
即戦力や経験値を有した人材は性別、年齢、キャリア、国籍に関係なく貴重な財産でもありますので、裾野を広げて採用率を高めていくことが、今後はとても重要であると考えています。
こうした先進的な採用手法を積極的に導入できる背景には、弊社には募集という「入り口」をはじめとする採用プロセスで得た膨大な人材属性データがあることに所以します。
蓄積した膨大なデータを活用することで採用が効率的に行われ、さらには、適性をもとにした育成や配置を的確に実施することが可能になれば、かかるコストは抑制されることになり、それが結果として収益性に反映されていくことになります。
Q.外国人のお話が出ましたが、
グローバル人材にも期待が寄せられますね。
藤野……そうですね。弊社の採用・育成モデルは、海外から就労するグローバル人材にも当てはまりますので、すでに2024年12月に日総工産は、即戦力に近い外国人材の採用ルートの開拓を目的とした取り組みを本格的にスタートさせています。
その一例に、ベトナムの国家大学・ホーチミン市工科大学と就労促進ならびに日本語教育を含む人材育成に関する協定を締結し、2025年春から日本語・日本文化の習得講座の受講がスタートしています。私自身も、第1期生の受け入れが予定されている2026年を心待ちにしているところです。
加えて、こうした課題を解決するため、弊社では国内でのグローバル人材の育成強化と平行して海外進出の取り組みも進めており、ベトナムのIT最大手「FPT IS COMPANY LIMITED」、三菱総合研究所の現地法人との3社間における業務提携を2025年5月に交わしたばかりです。
ただし、こうした取り組みをスタートするにあたって、様々な課題があげられました。それは例えば、円安の日本では他国と比較して労働報酬が決して高くない点や、各国は自国の経済成長を目的に、グローバル人材の日本就労は一時的なものが多く、中長期的な視点での人材育成が難しい・・・などといったものです。
今後は、半導体、オートモーティブ、蓄電池、介護・医療、リゾート、外食、サービス業などの幅広い業種を対象とし、日総工産を第二のふるさととするグローバル人材に「日本に来てよかった」「日本でずっと働きたい」と思ってもらい、生き生きと活躍してもらいたいと考えています。そのためにも、日本の文化や生活環境を学べる機会の提供のほか、受入れ環境や各種制度の整備を加速させることで、2030年までに外国人在籍数を3000人にする目標を、ぜひとも実現したいですね。
Q.日総工産の時代を読み取る人材育成は
多方面から、高く評価されていますね。
藤野……弊社のメインの取引先である製造業では、AIやFA(Factory Automation)化が加速度的に進んでいます。このことから、いずれは製造業に携わる人材の数は減少するのではないか……という見立てもあります。しかし、製造現場にAIやロボットを導入しても、それらの機械装置の管理やメンテナンスは人間にしかできません。
技術動向の変化は早く、昨日までの“当たり前”が、翌日には新しいものに変わっていることも珍しくないため、弊社では採用した人材の適性を見極めながら、関連した教育プログラムの開発など、教育体制の改革を積極的に推し進めています。
教育の方法がどんなに新しくなっても、取引先のニーズに合わせた人材を育成し、お客様の事業成長に貢献したいという思いは創業以来変わることはなく、今後も受け継がれていくものです。「人を育て 人を活かす」に根ざした人材育成にかかる改革や取り組みにより、弊社で高付加価値を養った人材がお客様のもとで活躍することは、弊社にとって何ものにも代えがたい喜びといえます。
Q. 新中期経営計画について
お聞かせください。
藤野……2026年3月期から3カ年で取り組む新中期経営計画では、日総工産の社長として売上高と営業利益の達成を特に重視しています。
この目標実現に向けて、ここまでお話しした様々な取り組みを加速させていく所存ですが、これからは期経営計画に基づく施策とあわせて、内向的な環境を排除することを目的に、外部の視点を通じて不足要素を見いだす取り組みや、ビジネスマッチングして実装する目的に基づいたグループ戦略部の新設などに着手し、課題の解決を迅速に行います。
また、新中期経営計画では「インダストリー戦略の深化」も掲げています。同戦略は、異なる産業領域でバランスを取り、ある領域が停滞しても、別の領域で堅調ならば経営は安定するというポートフォリオ効果を狙ったものとなります。
さらに、EV化によって半導体や電子デバイス産業との相関が強くなっている自動車業界が仮に外的要因で停滞した場合、その停滞は自動車業界にとどまらないというリスクも想定されますので、既存顧客との取引だけでは成長が鈍化するというリスクを踏まえ、既存事業で習得した製造装置の操作・メンテナンスのスキルなどの弊社の強みを新たな産業に応用することで、売り上げの伸びを加速させなくてはならないとも考えています。

Q. 最後に、お読みいただいた皆さまに
お伝えしたいことはございますか。
藤野……振り返りますと、23年3月期からの3カ年の前中期経営計画では、ウクライナ情勢、新型コロナウイルス感染症、世界的な半導体不足、自動車業界の認証不正問題、米中の貿易摩擦などの外的要因が取引先企業を直撃し、弊社への人材ニーズを鈍化させることになりました。
こうした外的要因を主とする様々なリスクを鑑み、今後は情報マーケティング力を高めて、予期せぬ外部環境の変化時にもリカバリーできる体制を構築しなければならない必要性を痛感しています。
その一環として、グループ内の個々の会社では力を発揮するのが難しい事案について、横串を刺して連携し、バックオフィス機能のホールディングスへの集約と、派遣社員の正社員化も進めていくことに積極的に取り組んでいきます。また、外部の視点を効果的に活用しながら、弊社グループに足りないものがあれば積極的に実装を推進していきます。
—— 取引先企業のみなさま、投資家のみなさま、業界関係者のみなさま、日総グループの社員、そしてそのご家族のみなさまをはじめとするすべての方からのご支援とご期待にそうため、日総グループは新たな体制でスタートいたしました。これからも成長、発展し続けてまいりますので、どうぞご期待ください。