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【特別対談】人が育つ現場に共通する、気づきの力とは?|横須賀シーガルズ 堂下コーチ×日総工産社長 藤野賢治

2026.01.30
【特別対談】人が育つ現場に共通する、気づきの力とは?|横須賀シーガルズ 堂下コーチ×日総工産社長 藤野賢治

「人を育て 人を活かす」を創業理念に、人材育成に力を入れてきた日総工産は人を成長させる現場としてスポーツにシンパシーを感じ、神奈川県を拠点に活動する女子サッカークラブ・横須賀シーガルズを応援しています。

今回は、横須賀シーガルズの堂下弥里コーチ(今年度より女子共同代表に就任:以下、堂下)と日総工産株式会社 代表取締役社長の藤野賢治(以下、藤野)による特別対談を実施。

NISSOアスリート社員であり、女子サッカーで育ってきた私、松井里央が聞き手となり、“企業”と“サッカークラブ”という異なる現場で「人を育てる」ことに向き合うお二人に、その本質を深く聞いていきます。

 

「自分の特徴を大切に」—横須賀シーガルズの指導

——堂下さんは18歳以下の選手を指導されていますが、小学生・中学生・高校生と年代が異なる選手を指導する中で、成長を促すために意識していることはありますか?

堂下)一人ひとりの成長段階に合わせた指導をしています。何も知らない子にいきなり「自分で考えて動こう」というのは難しいですよね。慣れてきて考え、工夫することができるようになった段階からある程度任せていき、最終的には自立させていこうと考えています。
同じ学年でもその子の個性によって段階が違うと感じています。

——女子選手は身体の成長に個人差があったり、同じ学年でもその子の個性に違いがあったりすると思いますが、その点についてはどのように考えていますか?

堂下)実際に身体の特徴によって劣等感を感じる子がいます。体が小さいことで、大きい子に勝てない、スピードで追いつけない、と思ってしまいがちですが、それは今の段階の話なので、まずは自分の特徴を大事にしてほしいと伝えています。

★ 自身の選手としての経験を指導に活かす、横須賀シーガルズの堂下コーチ★

 

言葉の裏の“本音”を見極める

――2人のお子様がサッカーをされている藤野社長から見て、小学生から高校生までの年代を指導することへの難しさはどのようなところに感じていますか?

藤野)中高生の時期は情緒の浮き沈みが激しくある時期だと思います。いわゆる反抗期ですね。
サッカーに向き合う中でモチベーションを高く保てる子もいれば、諦めてしまう子もいるでしょう。その中で彼女たちがどんな想いでサッカーをしているのか、個々の考え方に向き合いながら、サッカー選手としてだけでなく一人の人間として育てていくというのは、なかなか難易度が高いと思います。

堂下)そこはすごく難しいところだと感じています。
特に女子は言葉に発するものと、本当に思っている心の部分が違うことも多いです。
だからこそ表情や仕草も見て、本音を見極めるように意識しています。もちろん、私たちだけでは難しいので、ご家庭や学校も含めて、選手を取り巻く環境すべてでサポートしていく必要があります。
彼女たちの人生の中で、私たちがお預かりするのはほんの一部ですが、何か一言でも、後々心に残る言葉を残せたらという想いです。

 

——言葉の裏にある心の部分、という意味では、大人と関わる中でも感じることはありますか?

藤野)大人の場合は悩みが“深く、多岐にわたる”という難しさがあるのではないかと思っています。
悩みを内に秘めてしまう社員もたくさんいるので仕事中だけでなく、業務外の会話の中で出てくる一言に気づかないといけません。それを見逃して、あとから「あの時の表情はそういうことだったんだ」と気づいた時はすごく悔しくなります。
できる限りその人を見て聞いてあげる、という観察眼と傾聴力を持つことはすごく大事にしていますね。

 

★社員に寄り添い、会社とともに成長を目指す日総工産 藤野社長★

 

成長のために必要な「目線」

——伸びる人とそうではない人の違い、とは何でしょう?

藤野)10年後の会社のあるべき姿をどう組み入れるかを考えないと成長は鈍化します。
3年後、5年後、10年後と先を見ている人と、今のことだけを考えている人では成長に差が出ていると感じます。会社が中期経営計画を立てるのと同じように、未来のあるべき姿をイメージして取り組むことが、成長を加速させる1つの要因になっていると思います。

堂下)子供たちもそれぞれ目線が違います。プロを目指している子は目標から逆算をして今やるべきことを考えられていて、ぶれずに進めています。ただ、年代によっては目の前が楽しくないと先の未来は描けません。
今の充実感が先々のイメージにも繋がるからこそ、両方大事にしています。

——将来像を描けている人、先を見据えて行動できる人が、社会の中で成長する人の特徴なのでしょうか。

藤野)単に未来を考えているのではなく、「そのためにいま何をしなければならないのか」を考えられることが重要です。そうした理解ができていると、自然と“将来のための”勉強ができるようになってきます。私自身もスキマ時間を有効活用しながらいろいろなことを学んでいますが、それを強要するのではなくどう“気づかせるか”という点は少し悩んでいるところですね。

堂下)サッカーの場面でも、伸びる子は自分の試合の映像やプロの試合をたくさん観ています。「こういうプレーをしてみたい」と具体的なイメージを持って練習する選手の成長はやはり速いですよね。

 

教える難しさ、気づかせる難しさ

——人を育てていく中で、“教えること”と、“気づかせること”はどちらが大事なのでしょうか。堂下さんの指導方針はどちらに近いですか?

堂下)私は結構教える指導をしますが、後から「もっと選手に任せて良かったかな」と思うことはすごくあります。選手の成長段階によって、同じ物事でもどこまで伝えるかを変えていくべきだと考えています。

藤野)親の立場としては、子どもに気づかせるような会話を意識しています。
すべて伝えると喧嘩になることがあるので(笑)。
反対に社員に対しては限られた時間の中で指導する必要があるので、直接的に伝えることが多くなりますね。
立場的には、直接指導するというより、その社員の上司に「この部分は直したほうがいいよね」と助言して成長を促すようなコミュニケーションを取ることも意識しています。
そこは監督やコーチとは少し違いますね。

——相手や状況によって、伝え方を変える必要があることを今になって理解しました。学生の頃は周りの空気や他人の動向をすごく気にして、「あの子はコーチからアドバイスをもらっていたのに、私には何も言われなかった」と落ち込む日もありました。堂下さんはコーチとして、指導する時に工夫していることはありますか?

堂下)指導している選手全員と、平等にコミュニケーションを取るようにしています。目立つ子とすごく静かな子は目が行きやすいですが、特に問題なく淡々とやってくれている子はコーチングが少なくなりがちです。そういう子とは、練習以外の時間でもコミュニケーションを多く取るように意識しています。また、分け隔てなく接している姿を見せることも大切ですね。

——社員を指導する中ではいかがですか?

藤野)会議というものは報告会になりがちですが、本来は相談や議論する場です。だから私は社員と目線を合わせながら、一緒にゴールを見つけることを意識しています。
その場で相手に足りないことを指摘するのは、批判ではなく、議論をするため。
本気の意見を引き出し、本音で話せる空気を作るためにストレートに伝えることを大切にしています。

堂下)本音をぶつけるという部分で、子供たちはぶつけることで相手がどう受け取るか、という自分でコントロールできない部分に対する恐怖心がすごくあると感じているのですが、会社の中で意識されていることはありますか?

藤野)なるべく相手の身になって伝えています。
ただ、大人は自分の発言に責任を持てますが、子供は相手を傷つけていることに気づいていない場合もあります。
できれば全員で話す機会を設けたほうがいいと思います。
私も本部長たちに声をかけて相談する機会を作っていますが、意見を言い合える環境があることでお互いがサポートしあえるのだと思います。

 

主語が“私たち”に変わる瞬間

——私はゴールキーパーとして、試合に出ていなくともチームに貢献しようという想いで日々トレーニングに取り組んでいます。それは私だけではなく、ニッパツ横浜FCシーガルズの選手全員です。育成年代ではそうしたチームワークはどうやって作っていくのでしょうか。

堂下)例えば、自分が試合に出ていないとき、「なぜあの子が出ているんだろう」と相手に矢印が向いている間はなかなか気づきませんよね。相手の良さを真似しようと思えたタイミングで、初めて自分に矢印が向く。
その時に、チームプレイヤーになれるのだと思います。
自分に自信がない時ほど、意識が人に向きがちになるので、そういう子には「あなたの良さはここだよ」と伝え、本人に自信を持たせられるように働きかけています。とくに女子の場合は仲間が好きという感情になると、一気にチームがまとまります。どんな立場でもこの人のためなら頑張れる、という雰囲気を作ることは大切です。

 

——競争意識を持ちながらも、まずはチームを好きになること、帰属意識を持つことが大事になりますね。いままで指導してきた中で、「伸びた」と思う瞬間はありましたか?

堂下)主語が“私”から“私たち”に変わるときが大きな変化の瞬間だと思います。

私自身も、現役時代は常に“私”のことを考えるような選手でしたが、ベテランになって初めて“私たち”を主語に考えられるようになり、そうすると物事がスムーズに進むことにも気づきました。
いま選手たちが悩んでいることも、いつか主語が“私たち”に変わるときっと上手くいくようになるのではないでしょうか。

藤野)見える世界が変わりそうですね。自分の発言や行動に対して、「あの子はこう思っていたんだ」と気づかされることも、変化や成長に対してすごくいい影響を与えそうです。

堂下)そうですね。私自身もたくさんの失敗を経て、今があると感じています。元選手だからすごい、と選手たちに思わせるのではなく、自分の弱みやダメだった部分も出しながら選手に気づいてもらう方がいいのではないかなとも感じています。

藤野)「自分以外の誰かのために」「このチーム・組織を強くしたい」と考えられるようになった時が、人が成長するタイミングなのかも知れませんね。

 

——私もスポーツに育ててもらってきた中で、「誰かのために」頑張ったことを思い出しました。たくさんの指導者に導かれ、知らず知らずのうちに成長してきたのだと思います。
この対談を読んだ皆さんにとっても、立ち止まって“自分が変わる瞬間”がいつだったか、振り返るきっかけになると嬉しいです。本日はありがとうございました!

 

▼堂下 弥里 様 ご経歴

選手歴
1999-2004 横須賀シーガルズ
2005-2008 早稲田大学ア式蹴球部女子
2009-2010 アルビレックス新潟レディース
2011-2017 福岡J・アンクラス

指導歴:
2018-2022 横須賀シーガルズU-15監督
2023-2024 横須賀シーガルズU-18監督
2025-   横須賀シーガルズU-15監督
2018-2025 神奈川県女子U-13〜U-16トレセンスタッフ
2026-   横須賀シーガルズ女子共同代表に就任